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スナック・ママとバーテン見習いボクの同棲生活

オリジナル小説です。

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第12章-03

2013.07.23 (Tue)
毎年思うことであるが、年の瀬は他の月と比べて日の経つのが早いような気がする。

別に大晦日でこの世が終わる訳でもないのに何だか忙しない。

その慌ただしさのピークは12月22日だ。

なぜならば翌日が天皇誕生日で祝日だからだ。
今年は金土日と連休になるのでなおさらである。

本来は金曜と土曜日の約束であるが、翌日が祝日なので愛ちゃんとミミちゃんにも出勤してもらった。

早い時間は暇であったが、9時を過ぎたころから客が入り店は混みだした。

高木社長が社員を6名連れて忘年会の二次会で流れて来たのは10時過ぎであった。
生憎ボックス席の1つが埋まっていたので、急遽、厨房から丸イスを出して即席の席を用意するほどの大入りとなった。

最後の客となった高木社長の一団が席を立ち、ママが支払いの対応をしている時。
カウンターの中で洗い物をしていたボクの目の前にミミちゃんが来て小声で囁くように言った。

「今夜……。話し出来る? ファミレスで待ってるから」

そう言うと彼女はボクの返事も聞かず、高木社長の一団を見送りにドアの方へ行ってしまった。

店を閉めてファミレスに着くと、窓側の席に座っていたミミちゃんがボクの姿を見つけ笑顔で手を振ってきた。

彼女はコーヒーを飲んでいた。

テーブルを挟んで向かいの席に座り、ボクもコーヒーを注文した。

このファミレスで彼女と待ち合わせるのは久しぶりだ。
最近ではコンビニでビールとつまみを買って彼女のアパートに直行することがお決まりのコースになっていたからだ。

「旦那が出てきたのよ。先週末に」

ファミレスを待ち合わせにした意味がこのときに理解できた。
出所した旦那さんが彼女のアパートに居るからだろう。

「え、そうなんだ……」

「昼間の仕事は今日で辞めたし、幸子ママの店もあたしは明日までだから。来週の月曜日にアパート引き払って新潟に行くから引越しの準備もあるし……。あんたにお別れを言おうと思ってさ」

今夜のミミちゃんは何だかサッパリした表情をしていた。
新天地で心機一転する心境なのだろう。

「そうだったんだ。元気でね。」

「浅草の花やしき楽しかった。今までありがとうね」

「ボクも楽しかったよ」

お礼を言われるほどの事をした積もりはないし、あの日は翌日に英理子さんともデートをしたのだからボクは女ったらしの悪い男なのかも知れない。

でも、ミミちゃんと行った花やしきは本当に楽しかったし、彼女の思い出になってくれることは嬉しいと素直に思った。そして、ボクの思い出でもある。 

「ねぇ、この前の話。あんた覚えてる?」

「うん……。でもボクは新潟には行かないよ」

「そう……。そうよね……。うん。わかった」

彼女は納得したように頷いて、カップに残ったコーヒーを飲み干した。

「じゃあ、あたし帰るね。疲れてるのに呼び出してごめんね。最後にあんたと話せてよかった」

「明日の夜も店で会うじゃん」

「だって、店じゃ幸子ママも居るし……。仕事中じゃなくて、話したかったのよ」

〈え、やっぱりボクとママの関係を見抜いていたのだろうか?〉

「遅くなると旦那がうるさいのよ。『何時に仕事は終わったんだ?』とか。こっちは一人で必死に働いて生活してきたってのに!」

口では愚痴りながらも、その表情はなんだか嬉しそうにも見えた。

ボクは席を立ち窓の外を見ると通りの向こうで男がこちらを見ていた。
短髪で濃い緑色のジャンパーを着ている。距離にして30メートルはあるだろか、夜なので男の表情まではわからないが、通りの向こうから店内を見ていた様子であった。

ミミちゃんは屈んで座席の横に置いたいつもの白いダウンコートを取り袖を通していた。
会計を済ませ店の外に出ると、通りの向こうに男の姿はなかった。

「寒いなぁ」

吐く息が白くなるほど今夜は冷え込んでいた。
ボクはジャケットの襟を立てて前を合わせた。

「じゃあ、また明日ね」

そう言うと手を振ってミミちゃんは帰って行った。
だが、祝日である翌日の金曜日にミミちゃんは店に出勤してこなった。


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