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スナック・ママとバーテン見習いボクの同棲生活

オリジナル小説です。

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第8章 -02

2013.07.06 (Sat)
ボクは草加の倉庫に派遣されることが多くなり、英理子さんと会うことは少なくなったが、そんな事がきっかけで、彼女とメールをするようになっていた。

派遣先の職場ではお互いにあまりプライベートな事は話さないものだが、メールだとそれは違ってくる。
特に男女間でのメールだと。

英理子さんは48歳の人妻で、4つ年上の旦那さんと大学生の息子さんの3人暮らし。
大手町の会社で長く事務の仕事をして働いていたそうだが、数年前に20年務めた会社を退職して、今は派遣で働いている。
息子さんが大学を卒業するまでは働く必要があると言っていた。
夫婦仲はあまりよろしくないようで十年近くセックスレスだということまで本人がメールで話してくれた。

ある日、派遣の仕事が休みの日曜日に映画に行かないかと彼女からメールで誘われた。
人から貰ったチケットが2枚あるのだと言うのである。

待ち合わせの上野マルイ前に現れた英理子さんはジーンズに真っ赤なTシャツ姿でやって来た。
派遣で働きに来ていた時と変わらない服装だ。
襟ぐりの大きく開いた首元から浮き出ている鎖骨が艶かしい。

一緒に観た映画はあまり面白くない邦画だった。
ボクは途中で居眠りをしてしまった。
映画が終わって劇場を出ると英理子さんが言った。

「ごめんね。面白くない映画に無理やり誘って」

「ボクこそごめんなさい。隣でグーグー寝ちゃって」

「平気。わたしも少し寝ちゃったから」

彼女が笑いながら言った。

「タダで貰ったチケットなのに、勿体ないと思っちゃうのよね。きっと根が貧乏性なのね。お腹空いたから何か食べに行きましょう。つまらない映画に誘っちゃったお詫びにわたしがご馳走するから。でも、あまり高いものは無理だけど……」

そう言って微笑んだ英理子さんの口元から八重歯がチラリと見えた。

ボクたちは人でごった返すアメ横を歩いた。
ガード下には様々な店が軒を連ねている。
鮮魚を売る店ではしゃがれた声で中トロの切り身を売る声が聞こえ、珍味などを並べている乾物屋でも「よりどりどれも3個で1,000円だよ」と威勢のいい売り子の声が鳴り響く。

メロンやパインなどのカットフルーツを売る屋台もあれば、焼き鳥の旨そうな匂いが鼻をくすぐる。
ガード下の中にも店舗は続き、カバンを専門に売る店や化粧品を専門に扱う店など小さな店舗がいくつもある。

「ちょっと寄ってもいい?」

彼女は一軒の小物を扱う店に入って行った。
携帯ストラップやキーホルダーなどのアクセサリーを手に取って彼女が言った。

「ショウくん、見て見て。これ可愛~い。あ、こっちのウサギさんのも可愛~い」

メールで会話をするうちにボクたちはお互いを「ショウくん」、「英理子さん」と呼び合うようになっていた。

彼女はウィンドウショッピングが好きようで30分もガード下の中に連なる店を見て回るのに付き合わされた。

「英理子さん、そろそろ何か食べに行きましょうよ」

「ちょっと待って。あと五分だけ。あ~、見て見てショウくん。この小物入れ素敵だと思わない?」

少し前まで小物雑貨を扱う仕事をしていたボクだが、会社を辞めてからは興味を失っていた。
いや、心の何処かで避けていたのかも知れない。

「こんな商品を企画したら売れるかも知れない」とかアイデアが湧いてきたりするが、それを一生懸命にやって何になるのか? という気持ちになる。
彼女のように純粋にウィンドウショッピングを楽しめるのが羨ましいと思った。

 物を作る人がいて、それを買う人がいる。

 売る側と買う側。

 もっと露骨な言い方をすれば……。

 買わせる側と買わされる側。

 雇う側と雇われる側。

 働かせる側と働かされる側。

そんな社会の構図の中でボクはどちらの立場になるのだろう。
いっそ起業でもしみようかと思ったりしてみたこともある。
だがボクには資金がない。いや、金の問題ではなく自分には器量がないと30を過ぎて感じはじめていた。


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