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スナック・ママとバーテン見習いボクの同棲生活

オリジナル小説です。

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第8章 -01

2013.07.05 (Fri)
5年勤めた小物雑貨の会社を辞めたのは32歳の時だった。
自分の企画が商品化され店頭で売られるという面白みのある仕事ではあったが、いくらそれが売れようとも自分の収入に返ってこないことに失望したからだ。

〈このまま働き続けても、ここに自分の自己実現する場所はない……〉

さりとて、これといって何かやりたい事がある訳でもない。
高校を卒業して社会に出た頃は、頑張って仕事をすれば結果が後からついてくると、ただ漠然と思っていた。

こんなことなら20歳の時にアルバイトで働いたい医療検査機器の組み立て工場で正社員になればよかったのか? と思ったりもしてみた。
当時は定年まで同じ組み立て作業を黙々とするなんてことは自分には耐えられないと思ったし、もっと自分の実力で何かを掴みとる自信があったのだが……。

蓄えも無いボクには時間が無かった。
しばらくは派遣労働でもして凌ごうと人材派遣会社に登録をした。

埼玉県にある草加の倉庫で出荷作業をした翌日には江東区東大島の倉庫で梱包作業をさせられ、その翌日には足立区の北綾瀬での軽作業といった感じで前日の夜に翌日の派遣先の指示が携帯で派遣会社の担当者から伝えられた。

しばらくすると派遣先は草加の倉庫と北綾瀬のDM発送代行業社での軽作業に絞られた。

草加の倉庫での出荷作業は大きなダンボールに入った商品をトラックに積み込む力仕事で、派遣される人間も男ばかりであったが、北綾瀬のDM発送代行業社での軽作業は半数が女性の派遣スタッフであった。

封筒に寝具のカタログや健康食品のチラシなどを封入する。
簡単で単純な作業だが一日に終わらせなければならない数が半端ではなく多かった。

朝8時45分から作業を始めて、社名の印刷された封筒にDMのチラシを封入してゆく。
11時45分から1時間のお昼休憩に入る。
大きな作業台に広げたDMのチラシを端に寄せて作業台をテーブル代わりにして全員が昼飯を食べる。
仕出し弁当を頼んでいる者は廊下に弁当屋が置いていった大きなケースに入った弁当を取りに行く。

女性は自宅で作った弁当やおにぎり、或いは調理パンなどを持参してくる者が多い。
金の無いボクはいつも朝、駅前のコンビニで買ったカップラーメンとおにぎりを持参していた。

「はい、お茶をどうぞ」

紙コップから湯気を上げた熱いお茶をボクの目の前に出してくれたのが英理子さんだった。

彼女はいつもお昼になると給湯室でお茶を煎れて、持参した紙コップに人数分のお茶を配って回った。
彼女も派遣で働きに来ているスタッフだ。年は30代後半か40代に見える。
いつもジーンズに襟ぐりの大きく開いたTシャツ姿で、首元から鎖骨が浮き出ているスリムで均整の取れた体型の若々しい健康的な女性だ。
笑顔の時に口元から八重歯がちらりと見えるのがチャームポイントだとボクは勝手に思った。

「おばさんだから、お昼を食べたらやっぱり熱いお茶を飲みたくなるのよね。どうせお茶を煎れるならみんなにもと思って。100円ショップで買った紙コップだけど、12~13人分なら大したことないじゃない」

そんなことを話しながら全員に紙コップのお茶を配って回る英理子さんは、持参した弁当を食べながらいつも携帯をいじっていた。

たまたまボクの隣に座った英理子さんがいじっている携帯を覗くと、小さな液晶画面の中で黄色いマスコットが踊っているのが見えた。

「何ですか? それ」

「可愛いでしょ。クリックして運動させると成長するのよ」

「………」

「あなたもやってみたら?」

「ボク、ゲームとか興味ないですから……」

「やってみれば面白いわよ。あたしが招待状を送ってあげるから、それで登録してみない?」

「でも、ゲームはやらないからなぁ」

「いいから。登録だけしてみなさいよ。登録すると紹介した人にポイントが付くのよ。そのポイントでこの子に着せる洋服とか買えるのよ。だからお願い。登録してみて」

半ば強引にボクは携帯のメールアドレスを聞かれ、英理子さんから送れてきた招待状でその携帯SNSサイトに登録させられた。


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