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スナック・ママとバーテン見習いボクの同棲生活

オリジナル小説です。

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第4章 -03

2013.06.25 (Tue)
安田記念は東スポでも推している単勝2.2倍の⑧アパパネを軸にすることにした。

前日の土曜日にネットバンクに2,000円を入金して、手数料を引かれた1,800円で京都の最終12Rを3連複で買ったら的中して、8,200円の払い戻になったので、3連単マルチで配当高めを82点をネットのPATで買った。

結果は9番人気の3歳馬⑭リアルインパクトが勝って、2着に5番人気の①ストロングリターンで馬単25,810円。3連単は335,600円の高配当と荒れた。

勝った⑭リアルインパクトに騎乗した戸崎圭太はGⅠ初勝利となった。

人気を負った⑧アパパネは直線で伸びず6着に敗れた。

敗れたアパパネの蛯名ジョッキーが着た黄色と黒の楔形模様に腕の部分が青の勝負服を見るとボクは7冠馬ディープインパクトを思い出す。

6年前、当時30歳だったボクは新宿の四谷若葉にある小物雑貨のメーカーで働いていた。オリジナルキャラクターの携帯ストラップや液晶クリーナーなどを製造・販売する会社だ。

町田の医療機器組み立て工場のアルバイトを辞めたボクは浅草橋にある雑貨卸の会社に就職した。
その会社ではこの小物雑貨を製造するメーカーの商品も取り扱っていた。

問屋業とは製造するメーカーと小売店の橋渡しをするような業務であり、時には小売店からの商品に関する要望や改善案などを聞くことがある。
そんな小売店から聞いた話を製造元のメーカーに伝えたところ「ウチの会社に来ないか」と誘われ転職したのであった。

20名ほどの小さな会社でボクは営業と製造工程の管理を任されていた。

ある時、新商品の表示価格に印刷ミスがあり発注した印刷工場へ刷り直しをさせる事故が起きた。

発注した原稿では税込み表記であったものが、仕上がってみればなぜか税別表記で印刷されてしまったのだ。
校正刷りで見落としてしいたボクの責任でもあるが、上司は発注した原稿が間違っていないのだから印刷工場に無償で刷り直しをさせろと言って聞かない。

発注した印刷工場はボクが高校を卒業して最初に就職した早稲田にある印刷ブローカーの会社で下請けとして使っていた小さな印刷工場であった。

「ちゃんと確認の為にわざわざ校正を出しているんだから、ちゃんと見て確認してくれないと困るよ。紙代だけでも三十六万円はかかるんだからさぁ」

自分がちゃんと確認をしていれば防げた事故であると思うと責任を感じずにはいられなかったが、そんな製造工程のやり取りを理解する上司ではなかったので刷り直しの請求を会社が受け取るはずもなく、板ばさみになったボクはただただ印刷工場の社長へ頭を下げて無償での刷り直しをお願いした。

「しょうがないなぁ。君とは長い付き合いだから今回だけはウチがかぶるよ」

刷り直しに掛かる紙代の36万円だけでもせめて弁済しようとボクは思った。
しかし、貯金などまったくないボクには36万円ものお金を工面する手段がなかった。
そこで思いついたのが競馬であった。

6年前のボクはまったく競馬などに興味のない人間であった。
日曜日に何気なく付けたテレビが競馬中継を放送していた。
メインレースの払い戻しが映し出されると単勝が160円と1番人気で決まったのに3連単は8万円ほど着いていた。

その他のレースの払い戻しに切り替わると、3連単の払い戻し金額が20数万円であった。

〈競馬で当てれば印刷会社の社長に弁済できるかも知れない……〉

そう思ったボクは翌週の日曜日からスポーツ新聞の馬柱と睨めっこしてメインレースの3連単を買い始めた。1着になると目星を付けた馬を2頭に絞り、その3連単で36万円の配当になる買い目を選んでみたが、どれも穴馬券ばかりだ。

そこで700倍以上のオッズを5枚、900倍以上のオッズを4枚と的中した時の払い戻しが36万になる様に買うことにした。

正確なオッズを取る為にネットバンクに口座を作って、PAT会員にも登録した。
オッズ順に並べ替える為にノートパソコンでエクセルを使った。

PATで馬券を買うことも出来たが、ボクが現金を持参しても受け取らないと思ったので、的中馬券を持ってあの印刷工場の社長へ渡す為に、部屋でマークシートをシコシコと記入して、場外馬券売り場で馬券を購入した。

予算は1回に15,000円。
それがボクに工面できる最大の金額だった。

最初の日曜日はカスリもせずにあっさりとはずれた。
翌週の日曜日は1着になると目星を付けた馬が見事にハナでゴールしたがガッチガチの本線で2着3着も決着し、安い配当で終わった。

まったく今まで興味のなかった競馬に2週で3万も使ってしまい、3週目の日曜日に15,000円を使ってしまえば給料日まで毎日カップラーメンか何かで過ごす覚悟をしなければならない状況であった。

しかも25日の給料日は月曜日だから、次の日曜日には馬券を買う金はもう無い。

3度目の正直とばかりに挑んだレースが第65回皐月賞であった。

何度も言う様だが当時のボクはまったくの競馬初心者であった。
馬柱を見て距離ごとに1番早いタイムにマーカーを塗ったり、上がり3ハロンのタイムが33秒台だけにマーカーを塗ったりしていた。

デビューから3連勝のその馬がどれほど凄いのかもまったく知らず、馬柱がマーカーで染まったので、その馬を軸にして3連単のオッズをいつもの様にエクセルでソートして、的中した時の払い戻しが36万円を超えるように馬券を買った。

 2005年4月17日(日)
 第65回皐月賞(GⅠ)
 一着 ⑭ディープインパクト
 二着 ⑩シックスセンス
 三着 ⑯アドマイヤジャパン
 ⑭-⑩-⑯ 三連単 70,780円

⑭-⑩-⑯の3連単馬券を5枚買っていたので353,900円になった。
財布の中には千円札が5枚と僅かの小銭だけになったボクはすぐにでも馬券を払い戻したい衝動に駆られたが、迷惑をかけた印刷工場の社長へ弁済する為に買った馬券である。
36万円には僅かばかり足りないが、この的中馬券を刷り直しの為に余分に掛かった紙代に充ててもらおうと思い翌日ボクは印刷工場の社長のもとへ向かった。

「何これ?」

「馬券です。昨日の競馬で的中した馬券です。払い戻すと35万ほどになります。ご迷惑をかけてしまったのでせめて紙代だけでもと思って……」

「これ獲るまでいくら使った?」

「…………」

「君の気持ちだけで十分だよ」

印刷工場の社長は的中馬券を受け取ろうとはせず。ガシャガシャと音を立てる印刷機の回る工場の奥へ行ってしまった。
(第5章へつづく)


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