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スナック・ママとバーテン見習いボクの同棲生活

オリジナル小説です。

第12章 の記事一覧

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第12章-06

2013.07.26 (Fri)
今年も残すところあと6日となった月曜日。
ボクはいつものように店の準備をしていた。

酒屋が空いたビールケースを引き取って、新しいビールケースを置いてゆくと、ボクはカウンターの中に屈み瓶を一本ずつ濡れ布巾で拭いて冷蔵ケースにつめてゆく。
布巾がたちまち真っ黒になる。

酒屋から運ばれてきた瓶ビールは使いまわしのケースについた汚れや輸送中の排気ガスで汚れているものなのだ。

20本の瓶ビールを冷蔵ケースに仕舞ったとこで店のドアが開き誰かが入ってくる気配を感じた。

開店時間にはまだ30分ほど早い。

また蕎麦屋の大旦那・木村さんが待ち切れずに飲みに来たのかと思いながらドアを見ると男が立っていた。

髪は短髪でカーキー色のジャンパーを着た初老の男である。
店の客ではないと思った。

客にしてはあまりにも表情が殺気立っている。

「!」

ミミちゃんと会った夜に通りの向こうから店内を見ていた男だ。

「貴様か!人の女房に手を出した野郎は」

ドスの効いた太い声で男が言いながらカウンターの前まで来ると、カウンター越しにボクの襟首を鷲摑みにした。

「………」

突然現れた男にボクは足が震えて動くことも声を出す事も出来なかった。

〈ミミちゃんの旦那さん?〉

「どうなんだよ。間男は貴様なのかって聞いてんだよ」

心臓が今にも張り裂けそうな程ドキドキして、呼吸が追いつかず金魚のように口をパクパクすることしか出来なかった。

「クソ!」

男の節くれだった拳がボクの左頬に炸裂した。
まるで鉄球でも顔面に食らったような激しい衝撃でボクはカウンターの奥に弾き飛ばされた。

背中を壁に打った痛みと左頬の痛みが同時に襲ってきた。

男が回り込んでカウンターの中に入ってこようと動いた。
ボクは恐怖のあまり客のキープボトルを取って男に投げつた。
男の左肩に当たって床に落ちたボトルが割れた。

「貴様ッ。やりやがったな」

男はジャンパーのチャックを開くと内ポケットから木の鞘が付いた小型の包丁を取り出し、鞘を抜いて足元に投げ捨てた。

立ちあがって逃げようとするボクに向かって男が小型の包丁を持って突進してくる肩越しに店のドアが開き誰かが入ってくるのが見えた。

「あんた。やめて!」

左目の周りと口元が内出血で浅黒くなった顔のミミちゃんが飛び込んできた。

脇腹に何かがめり込む感触がした。
次の瞬間、その周りがカッと熱くなり激しい痛みを感じた。

男の節くれだった拳に握られた刃物がボクの腹にめり込んでいた。

男の拳が出血したボクの血で真っ赤に染まっている。
1ミリでも動けば痛みが増すようで動く事が出来なかった。

放心状態の男も刃物の柄から拳が離れなくなったように動かなかった。
泣き叫ぶミミちゃんの声とパトカーのサイレンを聞きながらボクは意識を失った。

(完)


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第12章-05

2013.07.25 (Thu)
偶然にもナンバーズ4のボックスが的中し、200円で買った小さな紙切れが64,600円に膨らんだ。
その金を有馬記念に賭けることにした。

5万円を超えると高額当選になるので、金曜日のうちに銀行の窓口で払い戻しを受け取り、その足でネットバンクと提携している別の銀行のATMで小銭も含めた全額を入金済だ。

1着が①ブエナビスタあるいは⑨オルフェーヴルの3連単で500倍以上の72点から70点を900円ずつと配当の高い2点を800円ずつ買った。

ひとレースに6万円も賭けるのは初めてであった。

PATの投票画面に暗証番号と投票金額を入力して“投票”ボタンを押す時に少しばかり手が震えた。

レースは向こう正面からスタートし、3コーナーから4コーナーを回って正面スタンド前を各馬が通過して行く。

ハナを切ったのは⑫アーネストリーだ。
1馬身ほど開けて番手が②ヴィクトワールピサである。

3番手集団に内ラチ沿いを白い帽子の①ブエナビスタ。
⑨オルフェーヴルは後ろから2番目という展開だ。

1,000メートル通過が1分03秒とゆったりしたペースである。
2週目の3コーナー手前からペースが上がり⑨オルフェーヴルは大外を捲くって、4コーナーから直線コースに向くと5番手にまで順位を上げていた。

そこから先は上がり33.3の脚を使って先頭に立ち見事1着でゴールした。
①ブエナビスタは直線で伸び切れず7着に終わった。

①ブエナビスタと⑨オルフェーヴルのどちらかが1着でどちらが3着以下になる馬券を買うことにして正解であった。

 2011年12月25日(日)
 第56回有馬記念(GⅠ)
 一着 ⑨オルフェーヴル
 二着 ⑤エイシンフラッシュ
 三着 ⑦トゥザグローリー
 ⑨-⑤-⑦ 三連単 78,260円

704,340円の払い戻しになった。

PATの画面に表示された金額が信じられなくてボクな二度も1のケタから数え直した。

喉がカラカラに渇いていた。
ボクは冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ブルトップを開けて一気に飲んだ。
アルコールが血管に染み込み気持ちが少し落ち着いた。

まとまった金が出来た事で、来年からの動きにメドが立った気持ちになった。
駒込のワンルームマンションを引き払い、群馬の寮へ越す時にスーツなどを処分してしまったので新しく仕事を探すにしても面接に着て行く服が無かったのだ。

それに昼間の仕事に就けば帰りが遅くなる事もあるだろう。
風呂なしのアパートで銭湯通いは何かと不便である。
引っ越しもしたいと考えていたが、敷金や礼金などの金を工面する為にはどうしてもまとまった金が必要だと感じていた。


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第12章-04

2013.07.24 (Wed)
やはり慌ただしさのピークは昨夜だったようで、祝日ということもあり店は地元の客が飲みに来た程度であった。

ミミちゃんは風邪を引いたので休みます。最後の日なのに行かれなくて申し訳ありません。とママの携帯に電話してきたそうだ。

昨夜ファミレスの帰りが寒かった事をボクは思い出していた。
もうミミちゃんと会うことはないだろう。

年末最後の重賞レースは有馬記念だ。
中山競馬場の芝2,500メートルで争われるレースだ。

ボクはいつものようにヤフースポーツの馬柱から数字を拾いエクセルに入力した。
近6走から2,000メートル、2,200メートル、2,400メートル、2,500メートルと3,200メートルの走破タイムを拾って入力する。

次にボクが独自に編み出した着順ポイント加算方式で1着から5着までの着順をポイントに換算してエクセルのセルに入力する。

更に“追い込み指数”も4コーナーからゴールまでの順位差をポイント計算して入力した。

最後に上がり3ハロンの近6走の平均値を入力して項目ごとにソートする。

1番早い走破タイムや高いポイントに“ピンク”。
2番目には“オレンジ”、それに続くもの複数に“イエロー”と色付けをする。

2,000メートルで1番早い走破タイムは⑩トーセンジョーダンの1分56.1。

2,200メートルで1番早い走破タイムは⑫アーネストリーの2分10.1。

2,400メートルでは⑧ローズキングダムの2分24.1。
そして2,500メートルでは⑥キングトップガンが2分32.5だが、着順や追い込み指数などを含めたエクセルのシートに“ピンク”と“オレンジ”が1番多く並んだのは①ブエナビスタと⑨オルフェーヴルであった。

オッズもこの2頭が圧倒的な人気を集めている。

この2頭が馬券に絡むことはほぼ間違いないと思われるが、両頭が絡む買い目はどれも配当が低いので、①ブエナビスタと⑨オルフェーヴルを頭で、どちらかが1着でどちらが3着以下になる馬券を買うことにした。

④ペルーサが出走取り消しになったので出走頭数は13頭だ。

このままフォーメーションで買えば①ブエナビスタか⑨オルフェーヴルを外して12頭のフォーメーションだから11×10で110通りだ。

①ブエナビスタが1着の3連単で110通り。
⑨オルフェーヴルが1着の3連単で110通り。
合わせて220通りになってしまう。

そこで、過去の上がり3ハロンが1番遅く斤量も近6走と比較して2.7キロ増の⑥キングトップガン。
それと2,400メートルのタイムは悪くないが4コーナーでの通過順位が悪い⑪ジャガーメイルを切って、1着が①ブエナビスタあるいは⑨オルフェーヴルの3連単で500倍以上の72点をボクは選んだ。

ここでいつもなら100円ずつ買うのであるが、この時はいつもより少しばかりボクは金を持っていた。

話は3週間前の日曜日にさかのぼる。
阪神競馬場で行われたジャパンカップダート。
毎年12月に行われるダート王者決定戦だ。

1番人気のトランセンドを1着軸に3連単を買ったが、2着3着も人気馬の決着で馬券は獲れなかった。

 2011年12月4日(日)
 第12回ジャパンカップダート(GⅠ)
 一着 ⑯トランセンド
 二着 ⑨ワンダーアキュート
 三着 ⑥エスポワールシチー
 ⑯-⑨-⑥ 三連単 6,180円

この時に決着した馬番の数字を宝くじのナンバーズ4で買ってみた。
これまでにもボクは日曜日のメインレースで決着した馬番をナンバーズで購入したり、Win5の数字をミニロトで買ったりしていたのである。

まず当たることはないと思ってはいるが、無闇やたらな数字を買うよりも、何かしら身近な数字を買った方がいいと思うのだ。

 ⑯⑨⑥の決着だから“1696”のボックスを買った。

 2011年12月5日(月)
 第3258回 ナンバーズ4
 抽せん数字 6196
 ストレート 15口 775,200円
 ボックス  469口 64,600円
 セット(ストレート) 80口 419,900円
 セット(ボックス) 1896口 32,300円

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第12章-03

2013.07.23 (Tue)
毎年思うことであるが、年の瀬は他の月と比べて日の経つのが早いような気がする。

別に大晦日でこの世が終わる訳でもないのに何だか忙しない。

その慌ただしさのピークは12月22日だ。

なぜならば翌日が天皇誕生日で祝日だからだ。
今年は金土日と連休になるのでなおさらである。

本来は金曜と土曜日の約束であるが、翌日が祝日なので愛ちゃんとミミちゃんにも出勤してもらった。

早い時間は暇であったが、9時を過ぎたころから客が入り店は混みだした。

高木社長が社員を6名連れて忘年会の二次会で流れて来たのは10時過ぎであった。
生憎ボックス席の1つが埋まっていたので、急遽、厨房から丸イスを出して即席の席を用意するほどの大入りとなった。

最後の客となった高木社長の一団が席を立ち、ママが支払いの対応をしている時。
カウンターの中で洗い物をしていたボクの目の前にミミちゃんが来て小声で囁くように言った。

「今夜……。話し出来る? ファミレスで待ってるから」

そう言うと彼女はボクの返事も聞かず、高木社長の一団を見送りにドアの方へ行ってしまった。

店を閉めてファミレスに着くと、窓側の席に座っていたミミちゃんがボクの姿を見つけ笑顔で手を振ってきた。

彼女はコーヒーを飲んでいた。

テーブルを挟んで向かいの席に座り、ボクもコーヒーを注文した。

このファミレスで彼女と待ち合わせるのは久しぶりだ。
最近ではコンビニでビールとつまみを買って彼女のアパートに直行することがお決まりのコースになっていたからだ。

「旦那が出てきたのよ。先週末に」

ファミレスを待ち合わせにした意味がこのときに理解できた。
出所した旦那さんが彼女のアパートに居るからだろう。

「え、そうなんだ……」

「昼間の仕事は今日で辞めたし、幸子ママの店もあたしは明日までだから。来週の月曜日にアパート引き払って新潟に行くから引越しの準備もあるし……。あんたにお別れを言おうと思ってさ」

今夜のミミちゃんは何だかサッパリした表情をしていた。
新天地で心機一転する心境なのだろう。

「そうだったんだ。元気でね。」

「浅草の花やしき楽しかった。今までありがとうね」

「ボクも楽しかったよ」

お礼を言われるほどの事をした積もりはないし、あの日は翌日に英理子さんともデートをしたのだからボクは女ったらしの悪い男なのかも知れない。

でも、ミミちゃんと行った花やしきは本当に楽しかったし、彼女の思い出になってくれることは嬉しいと素直に思った。そして、ボクの思い出でもある。 

「ねぇ、この前の話。あんた覚えてる?」

「うん……。でもボクは新潟には行かないよ」

「そう……。そうよね……。うん。わかった」

彼女は納得したように頷いて、カップに残ったコーヒーを飲み干した。

「じゃあ、あたし帰るね。疲れてるのに呼び出してごめんね。最後にあんたと話せてよかった」

「明日の夜も店で会うじゃん」

「だって、店じゃ幸子ママも居るし……。仕事中じゃなくて、話したかったのよ」

〈え、やっぱりボクとママの関係を見抜いていたのだろうか?〉

「遅くなると旦那がうるさいのよ。『何時に仕事は終わったんだ?』とか。こっちは一人で必死に働いて生活してきたってのに!」

口では愚痴りながらも、その表情はなんだか嬉しそうにも見えた。

ボクは席を立ち窓の外を見ると通りの向こうで男がこちらを見ていた。
短髪で濃い緑色のジャンパーを着ている。距離にして30メートルはあるだろか、夜なので男の表情まではわからないが、通りの向こうから店内を見ていた様子であった。

ミミちゃんは屈んで座席の横に置いたいつもの白いダウンコートを取り袖を通していた。
会計を済ませ店の外に出ると、通りの向こうに男の姿はなかった。

「寒いなぁ」

吐く息が白くなるほど今夜は冷え込んでいた。
ボクはジャケットの襟を立てて前を合わせた。

「じゃあ、また明日ね」

そう言うと手を振ってミミちゃんは帰って行った。
だが、祝日である翌日の金曜日にミミちゃんは店に出勤してこなった。


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第12章-02

2013.07.22 (Mon)
「外は寒~い」

白いダウンジャケットを着たミミちゃんが店のドアを開けて入ってきた。

その後ろから襟元にファの付いた焦げ茶のロングコートを着たママも出勤してきた。
店の前で偶然一緒になったのだろうか。

いつもよりママの出勤時間が早いことも少し気になった。

ミミちゃんはダウンジャケットを脱ぐと黒いハイネックのセーターに、白い真珠のネックレスをしていた。

早くも忘年会を行った会社もあるようで、10時過ぎから店が混みだし、最後のひと組が帰えり店を閉めたのが夜中の2時過ぎであった。

愛ちゃんは12時までなので既に上がっている。

ミミちゃんが身支度を済ませて帰るとママがカウンターで電卓を叩きながら言った。

「ミミが辞めるって……。今月一杯で。話があるって言うから、店に入る前に小島さんの喫茶店でミミと会っていたのよ。昼間の仕事も辞めて田舎に帰るそうよ」

〈うん。知ってる〉

思わず言ってしまいそうになったが、ボクは言葉をのど元で止めた。

「………」

「来年から入ってくれる子をまた探さなくちゃ。でもねぇ……。景気も悪いし、週末だけとはいえ人を雇うのも大変だから、しばらくは愛ちゃんだけでもいいかしら」

「愛ちゃんも馴れてきたし、大丈夫じゃないの」

「ねぇ、ショウちゃん。いざとなったらアタシたち二人で頑張りましょうね」

「……うん。そうだね」

内心はボクも昼間の仕事を探そうと考え始めていた。

3年もママの店に世話になり、ママと半同棲生活をしてきたのは居心地が良かったからである。

派遣先の寮を追い出され紙袋2つで東京に戻ってきた水商売は未経験のボクを拾ってくれたママには感謝している。

身体の関係から始まる付き合いばかりしてきたボクには愛とか恋というものがよくわからないが、ママの事を大切に想ってきたのは事実だ。

でも、居心地が良いママとの生活を続けることに将来の不安も感じずにはいられないのだ。

店で常連の客と会話して過ごす仕事は楽しいが、下町の小さなスナックから垣間見る世界ではなく、もっと広く社会と接点を持つ仕事に戻りたいと思い始めていた。

やはりちゃんと会社に就職して、何かカタチにするという“ヤル気”みたいなものが何年かぶりに蘇ってきたのだ。

ママに「店を辞める」と言ったら、ママは何て言うだろうか?

ボクが店を辞めてもボクとママの関係は続くのだろうか?

ボクはママとの関係を続けたいと思っているのか?

日常の風景のようになっていたボクとママの関係を改めて考えるのは億劫なことであった。


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