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スナック・ママとバーテン見習いボクの同棲生活

オリジナル小説です。

第11章 の記事一覧

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第11章 -04

2013.07.20 (Sat)
菊花賞は3歳馬のクラシックレースで京都競馬場の芝3,000メートルで争われる。

オルフェーヴルには中央競馬クラシック3冠達成のかかったレースだ。

3冠とは皐月賞、日本ダービー、そして菊花賞を制することである。
この菊花賞で勝てば史上7頭目の3冠馬となる。

東スポの見出しにも「オルフェ死角なし3冠」と載っている。
だが、ボクはいつものようにヤフースポーツの出走表から近6走のデータをエクセルのワークシートに入力し距離別の走破タイムや着順ポイントに上がり3ハロンの平均タイムなどを色付けした。

「競馬に絶対はない」と言われるように、どんなに堅いと思われた単勝オッズが1.8倍で1番人気の馬でもゴール前で差されてハナ差の2着に敗れることだってある。

だから何か確証の持てるものを見つけて馬券を買いたいのだ。
いや、確証という言葉は適切ではないかも知れない。
自分が納得できる方法で検証してから馬券を買いたいのだ。

馬券が取れても取れなくても、立ち返るものを残しておきたいと思う。
それがエクセルのワークシートに数値を入力して軸馬を決めるボクがオリジナルで考案した予想方法だ。

出走する3歳馬は3,000メートルという距離を経験したことがない。
強いからといって果たしてスタミナが持つのか。
距離が長いので展開のアヤで有力馬が馬群に沈む可能性だってある。

1,800メートルで1番早い走破タイムは1番人気の⑭オルフェーヴルだ。
2,000メートルで1番早い走破タイムは⑥シゲルリジチョウとコンマ1秒差が⑨ダノンミル。
2,200メートルは⑤フェイトフルウォーで、2,400メートルは⑦ゴットマスタングだが、この馬は2,000メートルの走破タイムが18頭の中で1番遅い。

着順ポイントは⑭オルフェーヴルが断トツに高く91ポイントだ。
追い込み指数と合わせた総合ポイントでも15.2ポイントと2番目に高い⑰フレールジャックの13.0ポイントと比較しても圧倒的だ。

更にボクが重視する上がり3ハロンの平均値も⑭オルフェーヴルが33.8と1番速い。

「競馬に絶対はない」と思うが、単勝オッズが1.4倍で1番人気の⑭オルフェーヴルを1着固定の3連単フォーメンションで買うことにした。

切るのは総合ポイントの数字が低い8頭で、9×8で72通りだ。
1着オルフェーヴルからの馬券が圧倒的に人気のようで100倍以下のオッズが20点ちかく並んでいる。

いつものごとくネットバンクにコンビニのATMから入金して手数料を引かれた3,800円の軍資金である。
堅い決着になると判断して低いオッズに太く買う手もあるが、なにしろ使える金はたかだか3,800円だ。
オッズが400倍以上の38点の馬券をネットのPATで買った。

結果は⑭オルフェーヴルの圧勝であった。
4コーナー手前から一気にまくって直線では後続を6、7馬身も引き離す加速力でゴール前を駆け抜けた。
終わってみれば2着、3着も2番人気と3番人気の決着で堅い配当となり馬券は取れなかった。

2011年10月23日(日)
第72回菊花賞(GⅠ)
一着 ⑭オルフェーヴル
二着 ⑬ウインバリアシオン
三着 ①トーセンラー
⑭-⑬-① 三連単 2,190円

(最終章・第12章へつづく)

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第11章 -03

2013.07.19 (Fri)
留美ちゃんが辞めてしまったので、週末はママとボクとミミちゃんの3人であった。
ボックス席では近所の運送会社で働くトラック運転手の3人が作業着姿でビールを飲みながらミミちゃんと話している。

3人の中のひとり、30代と思われるリーゼントヘアーの男は留美ちゃん目当てで週末に度々来ていた男だ。

店に入って来た時もキョロキョロしていたし、店のドアが開くと視線を向けているから、留美ちゃんを探しているのだろう。

3人の中で1番年配の男がカラオケで千昌夫の『北国の春』を歌いだした。
ボクは歌が苦手なのでカラオケで歌ったりしない。
だが、お店で酔ったお客が歌うカラオケの選曲を見ていると、季節感とかは関係なく自分のオハコの歌を歌いたいようだ。

カウンターで常連の大塚さんがポツリとつぶやいた。

「北国の春かぁ。中東の方じゃアラブの春で大変みたいだなぁ」

カウンターの中にいたママが言った。

「何とかって大佐が捕まって殺されたのでしょ」

「40年以上も独裁政権でトップに君臨していたんだから国民の恨み辛みも凄いのだろうなぁ。でも、民主化を求めて独裁政権を倒しても豊かになる保証があるとは俺は思わないねぇ。だって、民主主義の象徴であるアメリカでもデモが起きてるのだから……」

ママがクイズに答えるように手を挙げて言った。

「アタシ観たわよ。テレビで、それ。何だけっけ?」

ボクと大塚さんが同時に言った。

「ウォール街を占拠せよ!」

「そうそう、それ」

海の向こうのアメリカでは先月から『自分たちは99パーセントだ』と言ってウォール街を占拠するデモが続いている。

大塚さんが話しを続けた。

「格差社会は今になって始まった事ではないだろうが、銀行マンの口車に乗せられて、本当はマイホームなんて身分不相応な人たちに家を買わせて破綻させたり、その住宅ローンを挽き肉の様に様々な債券とミックスして投資銀行にばらまいたサブプライムローンが暴落したリーマンショックで一気に景気が冷え込んで失業者が増えた結果だ。行き過ぎた資本主義の結果、ガタガタになった国家を救えない民主主義の終わりを見てるみたいだよ。まぁ、社会主義だろうが、民主主義だろうが、イデオロギーの問題であって、只の屁理屈みたいなもんだし。この世の中、何処へ行ったって極楽浄土の桃源郷みたいな場所はないんだよ」

その日の夜はミミちゃんのアパートにボクは泊まった。

昼間はそれほど寒くはなかったが、夜になると冷え込んできた。
2人で狭い湯船に入り冷えた身体を温め、布団の中で抱き合った。

ミミちゃんはイキそうになると、ボクにしがみつきキスをしてくる。
小鼻を膨らませ、呼吸が速くなり、舌を絡め吸い付いてくる。

喉の奥から魂を吸い取られそうな激しいキスだ。

その激しさにボクの気持ちも高まり陰嚢が引きつるような感覚と共に彼女の中に放出した。

枕元のティッシュを2枚取って彼女に渡すと、それを持って尻の下にあてがい、ボクが抜くときに布団を汚さないように局部を押さえた。

ミミちゃんはティッシュを挟んだままクルリと身体を回転させ腹ばいになり、タバコに火を点けた。
一口吸って、フ~と煙を吐き出しポツリと言った。

「あたし、仕事辞めて田舎に行こうかと思ってるのよ」

「田舎って何処なの?」

「あたしの田舎じゃなくて旦那の田舎よ。新潟なんだけどね」

「旦那さんと……寄りを戻すの?」

「……。旦那が年末に出てくるのよ。別荘から……」

「え、別荘!」

ミミちゃんの旦那さんは恐喝事件を起こし懲役2年の実刑を食らったそうである。
その前に起こした傷害事件で執行猶予中だった為に、都合3年の刑で服役しているそうだ。

「あの子も男運が無いって言うか、付き合う男にろくなのがいないのよね」

ママが言っていた言葉をボクは思い出していていた。

ママはミミちゃんから旦那さんが犯罪を犯し刑務所に入っていることを聞いていたから、あんなことを言ったのだろう。

ミミちゃんは短くなったタバコを灰皿でもみ消しながら言った。

「あの人の実家は商売やていて……今は閉めてるんだけど、そこで喫茶店でもやろうかと思ってるの。昼間はコーヒーとサンドイッチでも出して、夜はお酒もだしてスナックみたいな感じでさ」

どこまで現実味のある話なのかボクにはわからないが、話しているミミちゃんは楽しそうだ。
何か目標や希望を持つことは大切なのだと思った。

ボクもママのスナックでバーテン見習いとして働く日々から卒業して、将来の事を考える時期にきているのかも知れない。

ミミちゃんがボクの顔を覗き込んで言った。

「ねぇ、あんたも一緒に新潟に来ない? あたしの店を手伝ってよ」

「え!」

〈出所してきた旦那さんがいるのに、どうしてボクが新潟でミミちゃんの喫茶店を手伝わなきゃならいの?〉

「どーせ旦那は働かないんだから、あんたなら真面目だし。それにあの人そう先が長くないと思うのよね。68だし、腎臓患ってるから……」

〈旦那さんが亡くなれば、2人で暮らして行こうという意味なのだろうか?〉

「ちょっと待ってよ。新潟なんで行ったことない場所で生活するなんて無理だよ。それに旦那さんだっているんだし。喫茶店を始めてうまく行くかどうかもわからないじゃん」

「アハハハ。そうよね。でも絶対にあたし喫茶店やると思う。ねぇ、店が軌道に乗ったら呼んであげるから、考えておいてね」

そう言うと、彼女はボクに身体を絡めてキスをしながら萎んだ陰茎に手を伸ばしてきた。


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第11章 -02

2013.07.18 (Thu)
「アタシ美容室に予約いれているから行ってくるわね」

そう言うとママはサッサと出かけてしまった。
ひとり部屋にいてもつまらないので、ボクも出かけることにした。

8月のお盆休みに英理子さんと早稲田に行った時に、昔馴染みの店が無くなっていることを知り、思いのほか時か経過していることを実感した。

16年も経てば街も変わるのは当然のことだろう。
「キッチン・オトボケ」でカツカレーを食べながら、自分が足繁く通った店がもう一軒あることを思い出していた。

4年前まで四谷の小物雑貨メーカーで働いていた頃によく昼飯を食べに行った店だ。
四ッ谷駅前の外堀通りと新宿通りの交差点を渡り、灰吹屋薬局の角を曲がった“しんみち通り”を入ってすぐの場所にある「洋食エリーゼ」だ。

カウンターと小さなテーブル席が2つほどの店だが、いつも行列が出来ていた。
外で待っていると店員がメニューを渡してくれ入店前に注文を取るので、並んでいても店に入れば注文した料理の出てくるのが早く、客捌きの上手な店である。

但し3人とかで食べに行こうものなら、まず並んで座ることは難しい。
だからボクはいつもひとりで食べに行っていた記憶がある。

ハンバーグやメンチカツにカニクリームコロッケなどの定食やカレーライスにオムライスと一通りの洋食メニューが揃っている店だが、ボクはここのオリジナルメニューと思われるビーフトマト定食を好んでよく食べた。

脂身の多い牛バラ肉とタマネギとトマトを炒めた料理だ。
味付けは醤油ベースのようであっさりとしているが肉から出た旨味とトマトのほのかな酸味がコクのある西洋料理のように感じられる。
添えられた千切りのキャベツとマッシュポテトをソースに絡めて食べるのがボクは好きだった。

足立区に住んでいると山の手に出るのは億劫だ。
北千住から地下鉄で新御茶ノ水まで出て、徒歩でJRの御茶ノ水駅まで歩き、中央線で四ツ谷駅に着いた。

4年ぶりにビーフトマトを食べようとわざわざ電車を乗り継いでやってきたのだが……
残念ながら店が変わっていた。

居抜きで借りたのか、店内の内装が変わった様子はないが、メニューがまったく違うのだ。
メニューを探してもビーフトマトが見あたらいのだ。

店の人に聞くとエリーゼは先月で閉店し、新しくカツ専門店として新装オープンしたそうである。

またひとつ思い出の場所が無くなってしまったみたいだ……。

ボクはポークカツレツ定食を食べて店を出た。

新宿通りを渡って昔働いていた会社の方へ向かう途中に有名な「わかば」というたい焼き屋がある。

1尾140円のたい焼きを買って食べながら昔働いていた職場のビルまで来た。

4年ぶりに顔を出してみようかと考えていたのだが、ビルの前まで来ると、そこから先の足が重くなった。

何か問題を起こして辞めた訳ではなし、円満退社ではあるが、その後の自分を振り返ると昔の上司や同僚と顔を合わせることを躊躇った。
みんなに会えば今は何をしているのかと聞かれるに決まっている。

派遣で働いて、派遣切りにあい、今は下町のスナックでバーテン見習いとして働いていると正直に話す気にはなれない。
まして、その店のママの部屋に居候しているなんて……。

〈そこまで話すことは決してないだろうけれど〉

18から社会で働きはじめ、36の今まで何にもカタチになっていない自分が社会からの落ちこぼれのように感じた。

今までに勤めた会社が続かなかった訳ではない。早稲田の印刷ブローカーの会社では2年。
工場のアルバイトを辞めて就職した浅草橋にある雑貨卸問屋は6年。
「ウチの会社に来ないか」と誘われ転職した目の前のビルにあるこの会社でも勤続年数は5年だ。

どれも中途半端だと言われてしまえば、それまでかも知れないが……
その時々の事情やボクなりの考えがあって行動してきた積りなのだが……。


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第11章 -01

2013.07.17 (Wed)
朝10時過ぎに起きて、ママと軽い朝食を済ませるとボクは自分のアパートへ戻ることにした。
1週間に1度は郵便物を取りに行くのだ。
10階からエレベーターに乗り、1階のボタンを押した。
途中で止まることもなく1階に着いた。

途中の階で誰か乗り込んでくるといつも緊張してしまう。
軽く頭を下げて挨拶程度はするが、下まで着く間の密室での沈黙が苦手だ。
ママの部屋に居候している身分であるからかも知れない。

1階のエントランスでスーツ姿の年配の男性とすれ違った。
ボクは軽く頭を下げて足早にマンションを出た。

ママのマンションに出入りするようになって3年近く経つが、同じマンションの住人と言葉を交わしたことは殆どない。
偶然エレベーターで一緒になったり、エントランスですれ違ってもあまり目を合わさないようにしているので、ここの住人の顔すらまともに覚えていない。

それにしても午前中のこの時間にスーツ姿で帰ってくるとは、一度会社に出社したが忘れ物でも取りに帰って来たのだろうか?
それとも何かのセールマンだろうか?

アパートへ向かう途中、甘い花の香りが漂ってきた。
古い民家の庭に植えられた金木犀の木にオレンジ色の花が無数に咲いている。

〈もう秋だなぁ〉

20分ほど歩いて自分のアパートへ着くと、郵便ポストを開けた。
新聞は取っていなし、郵便物と言っても大して使わない電気やガスの請求書ぐらいで、あとはポスティングで投げ込まれた宅配のピザや寿司などのメニューチラシと、名刺サイズの紙に店の名前と電話番号が大きく印刷された出張風俗のチラシぐらいだ。

風呂なしの安アパートに呼ばれたら風俗嬢も困るだろうと思うのだが、ポスティングをする人間にとっては関係のないことなのだろう。

昼過ぎにママのマンションに戻る途中、月極め駐車場に停めてあるママのベンツがないことに気付いた。
ママがクルマで出かけたのかと思ったが、部屋に入るとママは居た。

駐車場にクルマがないことを聞こうと思ったら、ママが先に話しはじめた。

「留美がお店辞るって……。結婚するんだて。妊娠もしてるみたいよ。産婦人科に行ったら妊娠八週目だってさ」

蕎麦屋の大旦那・木村さんが話していた通り、常連の小糸さんの部下である岡田さんと付き合っていたようである。
ママの携帯に数分前に電話してきたそうだ。

「誰か週末に手伝ってくれる若い子を探さなくちゃ」

ママはサバサバした言い方でもう辞めてゆく留美ちゃんには興味がないようであった。

「それより、ママのベンツ駐車場になかったけど修理でも出したの?」

「さっき、ショウちゃんが出て行ってからすぐに取りに来たから……。返したのよ」

「返したって、誰に?」

ママのベンツは8月に亡くなったママが昔世話になったという千葉で造園業を営んでいた人の名義だったそうである。
相続の関係で故人の資産を整理することになり造園の会社の人が取りに来たそうだ。
出かける時に1階のエントランスですれ違ったスーツ姿の年配の男性がそうだったのだろう。


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